LINE Ads Platform(LAP)を使ってみた感想・ネット広告比較

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気にはなりつつも、使う機会がなかなかなかったLINE Ads Platformを運用する機会ができたので、2018年3月現在のLINE Ads Platformを使ってみてどうだったか、Google Adwords/Yahoo!プロモーション広告, Facebook/Instagram広告と同じ条件(同じ地域・年齢帯・興味関心のセグメント)で同時に複数の広告を運用してみての感想です。

LINE Ads Platformとは

国内で現在7,300万人(2018年2月時点)が利用しているとされる絶対的プラットフォームとなったLINE。そのLINEの中でLINEタイムライン(2017年9月時点のLINE株式会社発表数字:国内で月4,600万人以上)とLINEニュース(2017年9月時点のLINE株式会社発表数字:国内で月6,000万人以上)に2016年6月より広告が出稿できるようになり、2017年10月からはLINEマンガ(2017年2月時点のNielsen Mobile NetView発表数字:国内で月279万人) 、続いて11月からLINE BLOG(ユーザ数の開示なし)が配信先に追加された運用型広告、それがLINE Ads Platform、略称をLAP(ラップ)と言います。

  • LINEタイムライン内掲載例
    LINEタイムライン内掲載例
  • LINEニュース内掲載例
    LINEニュース内掲載例

この広告の存在自体は、開始されたときから気にはかけていたのですが、どこから申請したら広告が掲載できるのかなどの情報が意外とネット上に出回っておらず、関西圏で代理店希望者向けの説明会などが開催されていたのかも見聞きしたことがなかったため、実際に運用できる機会を頂いてからも、出稿開始に至るまでに調べ事や申請等々で時間がかかってしまったので、出稿方法から簡単に説明していきます。

  1. 最初にLINE株式会社さんに lap_req@linecorp.com のメールアドレスから、代理店になりたい旨のコンタクトをとります。
  2. 数日後、担当者さんから折り返し確認電話がきます。
  3. メールで取引先登録・口座開設申込み書(エクセルファイル)が送られてくるので、こちらに指示内容に沿って記入し、担当者さんに返送します。
  4. LINE株式会社さんの5営業日以内に取引先登録手続きが行ってもらえますので、手続き完了次第、クライアント様の商材審査に移れます。
  5. 指示された審査フォーマットにあわせて、クライアント様のLINE@アカウントや、広告したいLP、アプリを記入して lap_judge@linecorp.com のメールアドレスへ送ります。クライアント様のLINE@アカウントや、広告したいLP、アプリなどは事前に揃えておくのが良いでしょう。このときのフォーマットは、LINEアドセンターに四半期ごとの最新資料が「LINE Ads Platform 2018年xx-xx月期 媒体資料」というファイルでアップされているので、掲載可否審査のページで確認できます。
  6. LINE株式会社さんの5営業日以内に、商材審査の合否がメールで伝えられます。不合格だった場合は、不備のあった点が指示されているので、その指示に従って修正をして、再度 lap_judge@linecorp.com のメールアドレスへ再申請します。
  7. 商材審査に合格すると、代理店用の管理画面が発行してもらえます。この管理画面から、広告素材が入稿できます。管理画面の操作方法については、担当者さんからこのタイミングで別途PDFの説明書がいただけるので、そちらを参照します。
  8. 入稿できるバナー広告は、静止画の場合は1200×628または1080×1080、動画の場合は16:9または1:1または9:16の比率となります。課金方式が静止画か動画かで異なります。静止画はCPC(Cost Per Click)でクリック型課金、動画はCPM(Cost per Mille)で広告が1,000回表示されるごとに課金される仕組みになります。
  9. 入稿し終えたら、バナー広告や広告文言についての審査が自動的に開始されます。2営業日以内で管理画面上の広告ステータスが「承認」もしくは「否認」になります。静止画には、20%ルール(テキストは画像の20%以内)がありますので、このルールが守れてなければ否認されるので気をつけましょう。20%以内に収まっているかを確認できるツールが提供されているので、審査に出す前に事前に確認するようにしましょう。「否認」された場合には否認理由が指示されますので、指示に沿って広告素材を作り直して再申請をします。「承認」されるといよいよ広告の配信が開始できます。

LINE株式会社さんの営業日内に限られていることから、他のネット広告と比べてもかなり大変なことがおわかりいただけることでしょう。LINEに広告を掲載したいというクライアントさんを抱えられることになった場合に、広告掲載にまで辿り着くのには、最低1ヶ月近くは掛かると見ておくのが良いでしょう。今すぐにでも始めたいという場合は、弊社をはじめ既に代理店になっているところに依頼されると商材審査と広告素材審査だけになりますが、それでも1週間は出稿開始までに必要になります。もちろん代理依頼をすれば広告運用手数料も必要になりますし、運用ノウハウを蓄積するためにも直接LINE株式会社さんの代理店になって行われるべきです。

なお、インハウスで広告素材を用意できる人材がいらっしゃる会社さんの場合、「わざわざ代理店を通さないといけないの?」と思われるかもしれませんが、そこは代理店=自社として申請すれば問題ないかと思います。LINE株式会社さん側で用意している管理画面が代理店用のものしか現状ないために、便宜上、資料や申請メールフォーマットは代理店でしか利用できないような打ち出され方になっているだけだと思われます。

広告素材について

バナーやらの広告素材のことをLINE Ads Platform上では、クリエイティブといいます。流れの説明でも先に一度触れましたが、バナー広告には静止画と動画があり、静止画の場合は1200×628または1080×1080、動画の場合は16:9または1:1または9:16の比率のものが登録できます。

広告素材が静止画か動画かで課金方式に違いがでます。静止画像はCPC(Cost Per Click)のクリック型課金、動画はCPM(Cost per Mille)で広告が1,000回表示されるごとに課金される仕組みとなります。なお課金方式には、3つ目の課金方式として、2018年2月に追加された新機能としてLINE@の友達に追加された場合に課金が発生するCPF(Cost Per Friend)があるのですが、CPF広告は仕様そのものが全くの別物になるため、このエントリーでは触れません。

もうひとつ注意しておきたいのが広告サイズによって、掲載される場所が異なることです。すべてのサイズがタイムライン、ニュース、マンガ、BLOGのいずれにも掲載されるわけではありません。2018年3月時点では、1200×628の静止画はタイムライン、ニュース、マンガ、BLOGのいずれにも掲載、16:9の動画はタイムライン、マンガ(一部)、BLOGに掲載、それ以外の1080×1080の静止画および1:1、9:16の動画はタイムラインのみの掲載となります。

このあたりをよく考えられた上で、広告素材=クリエイティブは用意するようにしましょう。

静止画のCPCでの運用をしてみると、いずれにも掲載される1200×628のバナーと、タイムラインのみの1080×1080のバナーとでは表示回数に約300倍の圧倒的な差が生じました。周囲の人に「LINEのタイムラインって見る?」と聞いても「見ない」という返答が自分を含め大半だったので、LINE株式会社さん発表の数字ではタイムラインを2017年9月時点で月4,600万人以上が利用しているとのことですが、一瞬覗いているだけの数字じゃないのか?と疑問に感じます。そのため、LINEのタイムラインの活用が今後見直されるような機能がLINEから打ち出されない限り、1200×628の静止画か16:9の動画以外で出稿するのは微妙な印象です。

テキストは、タイトルと説明があり、タイトルは25文字以内、説明は75文字以内で入力する制限があります。タイトルはいずれの広告面でも利用されますが、説明はNEWS、マンガ、BLOGでは表示されるのが一部のページに限られているため、説明は主にタイムライン用と考えれば良いでしょう。

なお、アプリの広告の場合は、このクリエイティブの入稿時にインストール先となるApple Store, Google Play ストア‎のURL、すでにアプリをインストール済みのユーザの場合にはアプリを立ち上げさせるためのURLスキーム(Androidでは、Package Name)を入力する欄があります。WebのLPの場合は、この部分の入力は不要です。

入力を終えると、審査が開始されます。しかしながら、この審査はLINE株式会社さんのあくまでも営業日内に行われることに注意しましょう。ステータスが審査中になっていても、土日祝日は審査をおこなってもらえません。連休、3連休を挟む場合などは大きなロスが生じます。加えて、注意したいのが、審査ステータスが承認になると、登録したクリエイティブを編集することができなくなることです。もし、編集したいという場合は、新たにクリエイティブを新規登録することになります。つまり、その審査が終わるまで再び待たなければならない事態になります。他のネット広告であれば、編集後、即座に審査が行われるので、タイムロスは最小限ですが、現時点のLINE Ads Platformは、細かく修正していくような運用には向いていません。

クリエイティブの登録画面
クリエイティブの登録画面

配信機能について

これは真っ先に画面を見てもらった方が早いでしょう。

配信機能の制御画面
配信機能の制御画面

OSバージョン指定

iOSとAndroid、それぞれのバージョン指定ができます。アプリ広告の場合に、アプリは動作対象があるので配信対象を制限するためのものです。WebのLPでは、CSSアニメーションをバリバリ使用しているLPなどで、とくにAndroidのバージョンで閲覧対象を制限したい場合があり、そういったときには有効な指定です。iOSは7.0以降からAndroidは4.0以降から最新バージョンまでの指定ができます。

性別・年齢

性別は男性・女性の指定です。年齢は制限する場合は下限は15歳、上限は49歳を指定でき、下限のみ制限、上限のみ制限という指定もできます。何をもとにユーザのセグメントを判定しているかですが、これは担当者さんに確認したところ、LINEアプリ内での行動履歴をもとに推定しているとのことでした。なお、LINE内にはLINE PROFILE+がありますが、LINE PROFILE+を登録しているユーザがいた場合にこの属性が配信対象に利用されているかは不明です。

地域

性別・年齢同様、LINEアプリ内での行動履歴をもとに推定されています。47都道府県単位で複数の地域をOR条件で指定することができます。Google Adwords/Yahoo!プロモーション広告やFacebook/Instagram広告では、市区町単位や市区町から指定の半径で細かく配信対象地域を指定することができるのに対し、この機能は大きく引き離されています。

実際に運用してみると、Google Analyticsで遷移してきたユーザの地域を調べることができますが、残念なことに現時点では精度は低かったです。兵庫県に絞った状態で配信したにもかかわらず、Google Analyticsから確認すると、神戸・姫路と対象地域のユーザも少なからずいましたが、大半が東京・大阪・福岡など兵庫県とは大きく外れた地域にいるユーザからのアクセスとなっていました。仔細に指定できるFacebook/Instagram広告においても、対象地域外からのアクセスは散見されますが、わずかなものであり対象地域外のアクセスからの方が多くなってしまうような的外れなことはありません。Google Adwordsは、この点では当該地域にいるユーザのみに絞れるので正確無比です。

CPC(Cost Per Click)のクリック型課金にもかかわらず、対象外地域のユーザのクリックで課金が発生してしまうのは、ローカルビジネスの広告にとっては致命的に感じました。担当者さんに相談したところ、現時点での回避策としては、クリエイティブのタイトルに地域名を入れるようにするとのこと。つまり、ユーザ自身に自分に関係する広告かどうかをタイトルに付いている地域名で判断を仰がせることで、無駄なクリックを発生させないようにということでしょうか...。この点は今後、精度と詳細度を大きく改善してもらいたいと思いました。

精度は位置情報を使ってくれればいいように思うのですが、使っていない理由は不明です。この地域の指定については、詳細度が47都道府県単位でしかなく、精度が低かった印象からも、ローカルビジネスの広告をCPC・CPMで運用することはおすすめできないです。2018年2月に追加された新機能であるLINE@の友達に追加された場合に課金が発生するCPF(Cost Per Friend)であれば、この地域の精度が曖昧であろうとも、おのずと興味をもってくれているユーザだけが獲得でき、それに対してのみ課金されるので、こちらの使い方はアリでしょう。

興味・関心

性別・年齢同様、LINEアプリ内での行動履歴をもとに推定されています。以下の18種類をOR条件で指定することができます。

  • ゲーム
  • デジタル機器・家電
  • スポーツ
  • 職・ビジネス
  • ファッション
  • 家・インテリア・園芸
  • テレビ・映画
  • 音楽
  • 教育・学習・資格
  • 金融
  • 健康・フィットネス
  • 自動車
  • 書籍・マンガ
  • 食べ物・飲み物
  • 美容・コスメ
  • 旅行
  • エンタメ
  • ショッピング

複数指定した場合、OR条件のため、広告表示対象のユーザは多くなりますが、とうぜんターゲット像もブレます。LINEアプリ内での行動履歴をもとにした推定であることも考慮して、多くても2、3種類に絞るべきでしょう。

Google Adwords/Yahoo!プロモーション広告は、直にキーワードで絞れる広告の特性上、圧倒的にこの点は軍配があがるのは致し方ないでしょうが、Facebook広告は非常に細くセグメントでき、なおかつどれぐらいのユーザに推定リーチできるのかをリアルタイムに示してくれるので、この点もLINE Ads Platformは大きく引き離されています。

費用感

まず最低入札額(2018年3月時点)が以下のように決まっています。

CPC¥24クリック時に課金
CPM¥4001,000回表示ごとに課金
CPF¥50友だち追加時に課金

これはあくまでも最低額であるため、この最低入札額で設定したのでは、広告そのものを表示してもらえません。入札額が高い広告ほど優先的に表示され、最低入札額に近くなるほど表示回数は制限されます。2018年3月時点での各平均単価は、上記最低入札額の約3倍で考えられると良いでしょう。

CPC単価ですと、¥70円前後です。Google Adwords/Yahoo!プロモーション広告, Facebook/Instagram広告のCPC単価はおおよそ¥90円〜ですので、他のネット広告と比べても、これはかなり割安に感じました。圧倒的ユーザ数を保持するLINEの強みは、Facebook/Instagram, TwitterのSNSをそもそもやっていない等、Facebook/Instagram, Twitterの広告ではリーチできない層にリーチできるところにあるので、現時点では新しいユーザ層が割安で開拓できると考えて良いと思います。そのため、今ならまだ広告市場ではブルー・オーシャンと言えますが、すぐにレッド・オーシャンに変わるかもしれません。

ただ、LINEアプリ内での行動履歴をもとに推定されているユーザ属性部分の精度や、広告主側で設定できる詳細度がまだま低い印象です。結局のところ、単価が割安でも、最終的にCPA(Cost Per Action)が高くついたのでは意味がないので、どういったモデルの広告かによっては、相殺もしくは、致命的に感じます。アプリ広告やセグメントをガチガチに絞る必要のないややマス向け対象の広告であれば、現時点では割安であり、LINEには未開拓のユーザがいるので積極的に使うべきだと考えます。

まとめ

LINE Ads Platformは、何をするにしても審査、審査に阻まれるため、細かく修正をかけつつ最適化していくような運用を行うことには適していません。このため、リアルタイムに編集しながら運用ができる他のネット広告で、最適化をかけつつ細かく反応を追っていき、ある程度で区切りをつけて反応の良かった広告をLINE Ads Platformにも登録する流れをとるのが良いでしょう。現在のLINE Ads Platformでは、修正をかけつつ運用していくにはタイムロスが大きいため無理があります。

配信機能面を鑑みると、ローカルビジネス広告の場合は、CPF(Cost Per Friend)での運用はアリですが、素直にセグメント機能に強いGoogle Adwords/Yahoo!プロモーション広告, Facebook/Instagram広告を使うべきです。

アプリ広告やセグメントをガチガチに絞る必要のないややマス向け対象の広告であれば、CPC・CPM運用でのLINE Ads PlatformやTwitter広告を含めてアリというのが、現時点の各広告を使ってみての感想です。LINE Ads Platformは機能追加・改良が頻繁におこなわれていますので、CPC・CPM運用面としては今後の機能追加・改良に大いに期待したいところです。

ちなみに、Google AnalyticsでLINEからのアクセスかどうかを判別するためには、LINE Ads Platformの管理画面で指定できる遷移先URLに?utm_source=line&utm_medium=socialを付け足すようにします。これを付けないと、LINEアプリからのアクセスは(direct) / (none)で記録され、LINEからのアクセスを判別できないので広告配信前に設定を確認しておきましょう。A/Bテストなどを兼ねて複数の広告を運用する場合は、?utm_source=line&utm_medium=social&utm_campaign=line_xxxのようにして、キャンペーン名を設定して判別をつけるようにします。

以上、LINE Ads Platformをはじめる前に知りたかったことをまとめてみました。同じように気になっている方の参考になればと思います。Facebook/Instagram, Twitterではリーチできない層にリーチできることにLINEの強みはありますが、個人的には2月末に追加されたばかりの新機能である、LINE@の友達に追加された場合に課金が発生するCPF広告運用に期待しています。LINEが絶対的プラットフォームである以上、ビジネス向けのLINEアカウントであるLINE@の運用を大きく躍進できるCPF広告運用こそ、LINE Ads Platformのオリジナル性が活きます。CPF広告運用については、次回のエントリーで触れたいと思います。