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Yahoo!に振り回された愚かな過去

桑田佳祐さんが食道ガンということで一ファンとしてとても心配しています。桑田さんの歌を聞いて、いつも元気をもらっているので、一日も早く良くなられることを祈っています。桑田さんの歌われるどん底のブルースには「皆見て見ぬフリして本当は知っている、この平和の裏に、愚かな過去があったのを」という詩があるのですが、先日のYahoo!JAPANと米Googleが提携することを受けて、Yahoo!JAPANの検索エンジンの歴史とそれに振り回されてきた愚かな過去についての話しです。

Google採用に至った経緯

現在のYahoo!JAPANが採用している検索エンジンは、米Yahoo!が開発したYSTことYahoo Search Technologyです。YSTはもともと、米Yahoo!が2002年12月に検索エンジン大手のInktomiを買収し、そこからオリジナルの検索技術を加えつくりあげていったものです。

そして、YSTを採用する以前は、2001年から2004年5月末までYahoo!JAPANはGoogleの検索エンジンを採用していました(後述しますが、さらにその前となるとgooの国産検索エンジンを採用していました)。ゆえに7月27日に発表された今回のYahoo!JAPANと米Googleの提携は、丸6年ぶりに再びGoogleの検索エンジンに戻ってきたことになります。

一年前の2009年に米Yahoo!はMicroSoftと提携し、YSTからBingに切り替えることを発表してから、Yahoo!JAPANもBingを搭載していく可能性が高いと言われていたようですが、Googleは確固たる日本語環境の検索エンジンと広告配信システムを持っており、その機能も現時点ではベストと判断したということに至り、Yahoo!JAPANはGoogleの採用を決めたようです。

このニュースはウェブ業界におけるここ数年来でもかなり大きな出来事であり、ウェブでビジネスを展開する人にとっては、何かしらの影響を受けることは避けれません。

Yahoo!JAPAN独自の味付け!?

ネットレイティングス調べによれば、2010年4月時点での日本国内の検索シェアは、Yahoo!JAPANがトップで53%、次いでGoogleが37%と、Yahoo!JAPANがGoogleのエンジンを採用すれば、実質、国内検索エンジンシェアの9割をGoogleが握ることになります。

しかしながら次のようなコメントが発表されているように、もちろんGoogleとは競合関係であり、単純にGoogleの検索結果と同じものを提供するだけにはならないようです。

「独自の味付け」でGoogleと勝負

ヤフーにとっては「技術の提供元が変わる」(井上社長)というイメージ。技術の上に、ユーザーの要望に合わせた"味付け"を加えて独自サービスを展開することで、Googleとは引き続き競合していく。

現在、検索キーワードによっては、検索結果ページに地図や天気などWeb検索以外の要素も表示されるが、これらは「検索エンジン以外から出している」味付けに当たる部分。Googleの検索エンジンに変わっても「付加価値を付ける自由度は極めて高い」とした。

ここで言及されている一部の味付け以外にも、どのような味付けが施されていくのか。ウェブ業界で仕事をしていると検索エンジンで上位に表示してくれというクライアントの要望が尽きることはありませんが、これまでYahoo!の検索結果の独自の味付けには苦い経験を強いられてきました。今では影響力が薄れてきたと言われていますが、数年前まで確かにひどい味付けがあったのです。

これまでにもあった独自の味付け

Yahoo!JAPANは日本のインターネットビジネスがまだ黎明期であった1996年4月からディレクトリによるウェブサイト検索サービスを提供開始しました。当時、Yahoo!JAPAN以外にもディレクトリサービスを提供する検索サイトは乱立していましたが、Yahoo!JAPANの利用者数はその中でも圧倒的であり、別格の存在でした。他の検索サイトにはいくら登録されてもアクセス数にはほとんど影響しなかったのに対し、Yahoo!JAPANのディレクトリにひとたび登録されればアクセス数はうなぎ上りに激増しました。

1990年代後半、一般家庭におけるインターネット回線の普及率が高まるとともにウェブも爆発的に普及し、人の手を介したディレクトリサービスだけでは満足な検索サービスを提供できなくなってきました。そこで、infoseekやgooといったロボット型検索エンジンが人気を集め始める中、ディレクトリ型検索サービスしかなかったYahoo!JAPANも、99年よりgooのロボット型検索エンジンを採用し、従来のディレクトリ検索にロボット検索を加えた検索サービスを開始しました。

大きなターニングポイントとなったのが2001年5月の出来事です。Yahoo!JAPANはこれまで無料で登録を受け付けていたディレクトリサービスから、有料(5万円、一部の指定業種は15万円)にて優先的に登録を受け付けるビジネスエクスプレスサービスを開始しました(さらに2005年4月から商用目的のサイトは完全有料登録となりました)。これを機に無料の登録申請で、Yahoo!JAPANに登録されることは非常に狭き門となり、「このサイトはYahoo!JAPANに登録されています」ということを掲げられているサイトが多く見られるようになるなど、Yahoo!JAPANのディレクトリに登録されることがサイト管理者にとっては一種のステータスとなっていました。

当時のYahoo!JAPANの検索結果は、ディレクトリに登録されているサイトの中で検索キーワードに該当するサイトが先行して表示され、その後にロボット検索の結果が続いて表示されるという形式でした。調査結果によって数値はいろいろと異なりますが、2ページ目以降を見るのは半数以下等の調査結果があったように、ディレクトリに登録されていなければ、ほとんどアクセスが期待できるはずもなく、多くのサイト管理者がYahoo!JAPANのディレクトリに登録されることを目標に日夜頑張られていたのです。

月日は流れ、検索ニーズは多様化していき、これに応じるため、2005年10月よりようやくディレクトリに登録されているサイト中心の検索結果から現在のYahoo!JAPANの検索結果と同じロボット検索による検索結果中心の形式となりました。しかしながら、その検索結果もディレクトリに登録されているサイトが優遇して表示され、ディレクトリに未登録だったサイトが目的のキーワードを含んでディレクトリに登録されれば検索結果の順位は見違えるほど上がるなど、これまでのYahoo!JAPANの検索結果にはディレクトリ登録に基づく独自の味付けが施されてきたのは紛れもない事実です。

検索エンジンにおけるユーザの違い

Googleが日本にやってきたのは、2000年9月のことです。Yahoo!JAPANの検索結果とは違い、Googleの検索結果は当初からロボット検索によるもので、すっきりとしたインターフェースに、クエリーに対して的を得た検索結果を返してくれると、インターネットの活用になれた利用者は、Yahoo!JAPANの検索結果に満足できず、続々とGoogleへと流れていきました。

しかしながら、日本のインターネット利用者をレベル分けすると、ライトユーザ層が大半で、Yahoo!JAPANはそのライトユーザ層にとって絶対的な地位を今日まで築き続けてきました。その結果、Yahoo!JAPANにはライトユーザーや女性・若年層が多く、Googleにはヘビーユーザーや男性が多いといった、日本の検索エンジン市場にはいつのまにか独自の棲み分けが形成されてしまいました。

仕事のためとペテン師も演じてきた

ここまで長々と書いてきましたが、ポイント部分を抜粋してみると、

と纏めることができるのですが、この条件が揃っているということは、たとえばウェブ上で女性をターゲットとした商売をする場合、対象となる女性ユーザ層の多くがYahoo!JAPANを利用することから検索エンジンによる入り口はYahoo!JAPANに絞られ、その結果、Yahoo!JAPANの検索結果で上位に表示されるためには有料のディレクトリ登録が必須要件であり、もはやビジネスエクスプレスサービスに頼らざるを得なかったというのが実態でした。

そして、私の仕事の話へと移るのですが、現在のフロントエンドエンジニア職に転身する前はWebプランナー兼ディレクター職だったということもあり、クライアントから検索結果で上位に表示してくれとSEOに関する仕事依頼がおりてくることは少なくありませんでした。その都度、企画書を作成し、クライアントのもとへ説明に行くのですが、こういった仕事をしている時は何とも言えない虚無感に苛まされていました。

お金さえ払えば上位に表示されるということ自体は単純で分かり良いのですが、人の手を介していないロボットによる平等の検索結果が提供されるはずが、そうではなく恣意的に操作された検索結果であることがどうも納得できなかったのです。結局、お金で検索結果の順位を買っているようなものであり、自分がクライアントに説明している姿を客観的に想像すると、まるでペテン師を演じていたようなものでした。これでは親の経済力により学力に格差が生じ、教育機会に平等がないのと同じことだと、こんな仕事が自分のやりたかった仕事ではないと、3年間経験してきたプランナー・ディレクター職を離れることにしたひとつの理由がこのYahoo!JAPANに振り回されてきた愚かな過去にあります。

新たに生まれ変わるYahoo!JAPANの検索結果では、ロボット検索にディレクトリの登録有無による影響を受けることのないような、平等な検索結果を提供してくれるものであることに期待します。